「賃金は上がる」ノルムの定着を
(全労生 議長・神保政史)

 2025年を振り返りますと、物価高の長期化や原材料価格の上昇、円安の進行により、家計や企業活動が圧迫され、生活のさまざまな場面で負担が増大した一年でした。また、生成AIの普及が急速に進み、生産性の向上や業務の効率化、暮らしの利便性の向上が期待される一方で、仕事の内容や雇用のあり方の変化、情報の適切な利用や倫理面での課題も明らかになりました。さらに、賃上げの重要性が社会全体で改めて共有され、労使による議論も一段と深まり、2年連続で5%超の賃上げを実現するなど、持続的な賃金引上げに向けた取り組みが確かな広がりを見せた年でもありました。

 この気運を確固たるものとするため、2026年春季交渉は、賃金と生産性の関係を再構築するうえで、極めて重要な局面となります。力強い賃上げが続いているとはいえ、実質賃金の改善は依然として道半ばであり、国際比較においても日本の賃金水準は十分とは言えません。持続的な賃金引上げを未来につなげるには、「賃金は上がる」「人への投資こそ成長の源泉である」というノルムを社会に根づかせることが不可欠です。

 その実現に向けては、適正な価格転嫁やサプライチェーン全体での取引慣行の改善、働く人が安心して能力を発揮できる職場環境の整備、生産性向上のための投資などの取組みを着実に積み重ねていかなくてはなりません。そして、生産性運動三原則である「雇用の維持拡大」「労使の協力と協議」「成果の公正な分配」を軸に、労使が現状と課題を共有し、真摯に協議を重ね、改善を進めていくことが何より重要となります。

 本年は丙午(ひのえうま) の年です。丙は「陽の気が強く、物事が明るみに出て成長する」ことを、午は「勢いと転換」を象徴するといわれます。これまでの歩みを確かな成果へ結びつけ、新たな飛躍への契機とする一年にしたいと考えています。生産性向上と公正な分配の好循環を実現し、働く人が誇りと希望をもって力を発揮できる環境づくりを、皆さんとともに進めてまいりたいと思います。

 本年も変わらぬご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

(「ネットワーク全労生」生産性新聞2026年1月25日号掲載)

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