産別紹介⑫ 私鉄総連:公共交通を守るために(私鉄総連 書記長・樋口和司)

 日本私鉄労働組合総連合会(私鉄総連)は、鉄道、バス、ハイヤー・タクシー、その他様々な関連事業の職場で働く仲間で組織する産業別労働組合です。1947年に結成され、2025年8月現在、北は北海道から南は九州・沖縄まで全国243組合、約10万人の組合員が加盟しています。また、全国に九つの地方連合会と、直加盟のハイヤー・タクシー、沖縄で組織し、専従役員を配置できない中小組合の運動をサポートしています。結成されてから、今日まで生活と雇用、労働条件の維持・改善と、平和な社会を築く運動を一貫して進めてきました。組合員の求める課題を現実にするためには、一組合だけの運動にとどまっては難しいとの思いから、力を合わせ、多くの課題を克服してきました。

 全国労働組合生産性会議(全労生)は、生産性運動三原則①雇用の維持拡大、②労使の協力と協議、③成果の公正な分配を柱とする生産性運動の展開と、「生活の質の向上でゆとりある社会づくりを進める」結成30年宣言を主眼において、雇用の安定確保、所得水準の向上、時短などの運動を展開されていたことから、私鉄総連は、1990年に、全労生へ参加することを確認し現在に至ります。

 近年、コンプライアンス遵守などが謳われる社会において、生産性運動のひとつである、「労使の協力と協議」は、重要な意味をなしています。これまでの歴史をみても、数々の労使紛争がありましたが、現代においても、労働協約無視や不当労働行為が発生し、全国の労働者に影響を与えかねない大きな問題として、「正常な労使関係の構築」「不当処分の撤回・和解」を第一義に、当該単組と組合員を、全国の仲間とともに支え、裁判闘争支援に取り組みました。判決では、不当労働行為第7条4項が言い渡され、和解条項では不当処分の撤回、組合の団結権を尊重し、今後、不当労働行為を行わないこと、労働協約を遵守することが確約されました。

 公共交通は現在、鉄道、バスを問わず要員不足により、やむを得ない減便や路線廃止に至っています。また、物価高騰による燃料費や安全設備投資の増加により、公共交通の維持・存続に影響をおよぼしています。私たちは、公共交通を守る取り組みを、労使一体となり取り組んでいますが、ひとたび労使紛争が発生すると、利用者、株主、企業、そしてそこで働くものにとっても、何一つ良いことはありません。

 私鉄総連は、健全な労使関係のもと、交渉を積み重ね、回答日時までに回答を引き出す考えのもと、主要闘争である、春闘、秋闘(労働条件闘争)の解決へと、運動を展開しています。誰もが安心できる平和な社会で、「生活の質の向上でゆとりある社会づくりを進める」ことが重要と考えます。

(「ネットワーク全労生」生産性新聞2025年9月15日号掲載)

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