産別紹介① UAゼンセン:生産性三原則に基づいた人を大事にする経営(UAゼンセン 書記長・古川 大)

 UAゼンセンは、繊維・衣料、医薬・化粧品、化学・エネルギー、窯業・建材、食品、流通、印刷、レジャー・サービス、福祉・医療、派遣・業務請負など、国民生活に関連する産業で働く労働者が結集する産業別労働組合です。

 UAゼンセンは、1912年に結成された友愛会を源流とし、戦後は第3次産業の拡大といった産業構造の変化や短時間・有期・派遣労働者など雇用形態の多様化に対応した積極的な組織化を進めてきました。そして、幾度かの産別統合を経た結果、現在は2,208組合、187万8,285人が加盟し、短時間や有期契約などの組合員が全体の6割を占めています。産業別に製造産業部門、流通部門、総合サービス部門の部門制を敷いて、産業内における公正労働基準の確立や産業政策の実現を目指した運動を展開しています。また、全国47都道府県に支部を置き、専従者を配置できない地域の中小労働組合の運動をサポートしています。

 日本生産性本部が設立された1955年当時、生産性運動に対する労働組合の認識や対応は統一されていませんでした。UAゼンセンの旧組織も議論を重ねて生産性運動に参画していきます。最終的に賛成したのは、生産性運動は単なる合理化運動や能率増進運動ではなく、産業民主主義を徹底し、建設的な労使関係を確立する機会になるとの認識に至ったからであり、また、生産性運動は友愛会以来の人間性の尊重、人類の進歩発展という基本理念と通底していたからでした。

 以来、UAゼンセンは、産業・企業の健全な発展によって雇用の安定と労働者生活の向上さらには社会の進歩と経済の繁栄につなげるため、生産性の向上という観点では経営側と協力し、その公正な成果配分を求める生産性三原則を運動の価値として継承してきました。また、生産性三原則の具体的な実践として、日常的に企業や事業場内に労使協議制を確立して生産性向上などについて労使協議を推進するとともに、統一闘争を背景とした団体交渉を通して公正な成果配分を求める賃金闘争を行っています。

 30年にわたり日本の賃金水準が停滞した要因は、アメリカやユーロ圏と異なり、一人当たり実質雇用者報酬の伸びが一人当たり実質労働生産性の伸びと乖離していることにあります。デフレ経済から確実に脱却し、賃金と経済の好循環を実現していくには、今一度、生産性三原則を社会的合意として再認識する運動を進めるとともに、新たな感染症などのリスクが今後発生しても、人件費を対象としたコストカット経営に逆戻りするのではなく、人を大事にする経営(人への投資)の考え方を堅持する強い姿勢が必要だと考えます。

(「ネットワーク全労生」生産性新聞2024年6月25日号掲載)

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