有意義な社会対話継続を(全労生 前副議長・髙倉 明)

 日本生産性本部が1955年に設立され68年が経過した中で、その半分の34年間にわたり、労組専従役員として生産性運動推進の一端を担えたことは大変光栄であった。

 生産性運動は、人間尊重の精神のもと、「生産性運動三原則」を指針とした労使の厚い信頼と協力が運動推進の原動力であり、この運動こそが、企業の健全で永続的な発展をもたらし、働く者の活力と幸せを生み出すものと確信している。

 私は、国際労働運動に深く携わってきたが、欧米では社会対話(Social Dialogue)が、社会正義や社会・経済の進歩を促進するための政策を確立する上で決定的に重要な役割を担っている。今年、8年ぶりに政労使会議が開催されたが、今後も継続して政労使・三者構成による有意義な社会対話が実施されることを切に希望する。

 今年の春闘では、大幅な賃上げ回答の引き出しが続いているが、OECDの中でも低位にある日本の賃金水準を引き上げていくことは喫緊の課題である。

 バブル崩壊直後に私は労組の委員長を務めていたが、経済・企業環境は最悪で連合はじめ多くの産別・労組が賃上げ要求を断念した。しかし、企業の再生・復興に向けて、企業の競争力の源泉は「人」であり、その「人」が意欲や活力を持てなければ企業の競争力は維持されず、企業の発展・成長は望めない、との信念のもとで、賃上げ要求に踏み切り厳しい交渉を経てベアを獲得するに至った。

 厳しい時の「人への投資」は、何倍もの活きた投資となって、企業の競争力の維持・向上に寄与することは間違いないと確信している。

 また、「成果配分は一時金で」という考え方があるが、一時金は単年度の業績をベースとした配分であり、継続的な労働の質の向上への配分とは性格が異なり、日々の生活を安心して安定的に過ごすことを考えれば、生産性向上などへの成果配分は、働くものが最重要視し、安心感につながる月例賃金・月給に対して実施されるべきだと思っている。

 今年の賃上げの成果が中小規模労組にも波及し、来年度以降も継続的に賃金水準の是正が行われ、働く者の将来不安の払しょくや意欲・活力の向上につながる生産性運動を、「愛と信頼、そして勇気」をもって力強く推進していくことを希望する。

(「ネットワーク全労生」生産性新聞2023年4月15日号掲載)

掲載紙PDF