昨年より世界規模でエネルギー資源や原材料の価格高騰が起こり、日本においても消費者物価が2~4%上昇する状況が続いています。一方、先進諸国では10%程度の物価上昇となっており、日本国内のサプライチェーンにおいてはコスト増が十分に価格転嫁できていない実態にあります。「労働者の生活も苦しいが、価格転嫁ができない企業も苦しい」状況の中で、私たち労働組合は、働く仲間の生活を守るため、要求を引上げる判断をしました。現在の物価上昇局面において、適正な賃上げが行われなければ、国内消費は大きなダメージを受け、価格転嫁を妨げ、かつての長期デフレのような負のスパイラルに再び陥る事になります。
更に、今回の賃上げ要求の大きな意味合いは、「長年停滞してきた日本の賃金を、再び浮上させていく」ことにあります。1997年以降、日本国内だけでみると、一見私たちの行ってきた賃上げはその時々の経済情勢と整合性があるように見えますが、国際比較でみた場合、他の先進諸国はこの間物価も賃金も上昇し、経済も一時の不況局面を除けば成長を続けてきました。結果、日本は先進国の中で最も物価と賃金の安い国の一つとなってしまっています。今こそこうした状況を脱し、生活改善を実感できる暮らし、緩やかな物価上昇とこれを上回る賃金改善の好循環が生まれる経済を作り出していく、そのスタートを切らねばなりません。私は少子化問題解決の糸口もこの辺りにあるのではないか、と思っています。
しかし、ただ賃金を上げれば全てが解決するわけではなく、これから数年・数十年継続的に賃金を引き上げていくためには、その裏付けとなる生産性の向上が必要不可欠です。サプライチェーンを含めた適正価格の実現と同時に、デジタルツールの更なる活用やビジネスモデルの見直しなど、企業体質の強化について私たちは企業の対応を促し、生産性運動三原則の考え方に基づいて労使協議に臨まなくてはなりません。
かつてないほど労働組合への期待が高まっている中にあって、本年も全労生構成組織の皆さんとともに活動を進めて参ります。今後とも全労生の活動にご理解・ご協力をよろしくお願いします。
(「ネットワーク全労生」生産性新聞2023年2月25日号掲載)