AIへの労組の対応注視(全労生 前副議長・野田三七生)

 全労生の副議長を退任して早2年。OBの分際にて若干の課題認識を述べること、お許しいただきたい。

 本題に入る前に、先ずは、『全労生』に集う仲間が、発足(1959年)から60年余が経過する今日においても「生産性運動(三原則)」に拘り、継承・実践されていることに敬意を表したい。

 今日までの粘り強い発信が、『2023春季生活闘争』における妥結・決着に一定の役割を果たしたことは言うまでもなく、“賃上げによって成長と分配の好循環を創造し、持続可能な経済・社会と国民生活の向上を実現する”との連合方針が前進(春闘の見える化)したことを、大変うれしく思うと同時に、ようやくにして訪れたポストコロナ(新たな日常)という状況下での継続した取り組みにも期待をしたい。

 その上で、若干の課題認識を申し上げるが、それは生産性運動(三原則)を取り巻く変化(デジタル革命)への対処についてである。

 “生成AI”という言語が乱舞する今日、1990年代に蜂起したインターネット革命は、“Web3”と言われる新たなステージを迎えているが、その代表格が、スタートからわずか5日で100万ユーザーを獲得した「チャットGPT」であり、世界的関心事となっている。

 “双方向”と“ブロックチェーン”をベースとしたAI(人口知能)は、新たなビジネスモデルを創造し、産業構造の大転換を齎すとも言われる中にあって、「課題先進国・日本」にとってのAIへの積極的アプローチとキャッチアップは必然であり、かつ生産性向上の観点からも重要なテーマであることは論をまたない。

 このような中で、米連邦議会の公聴会(5月)におけるサム・アルト氏(米オープンAI社CEO)の発言「AI企業を認可する新しい政府機関を設立すべき」が話題となるなど、セキュリティや倫理・コンプライアンスに関わる議論も活発化しているが、労働組合としても、社会制度はもとより、雇用・労働に関わる諸制度の大きな見直しにつながる動きとして、注視しなければならない。

 いずれにしても、“Web3”という大きな変革期。「生産性運動(三原則)」をどう位置づけ実践するのか、全労生としての研究と発信に期待したい。

(「ネットワーク全労生」生産性新聞2023年7月5日号掲載)

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