生産性運動を国民運動へ(全労生前議長・野中孝泰)

2023年春闘と政労使会議

 2023年春闘は、実質賃金向上へ向け潮目を変えなければならない社会責任型春闘である。折しも、『政労使会議』の実現に向けた話が岸田首相、十倉会長、芳野会長から出ていることに敬意と心からの期待を申し上げたい。生産性運動三原則(①雇用の維持拡大、②労使の協力と協議、③成果の公正な分配)に対する今日的意義や課題の共有、そしてそれぞれの立場における役割と責任を果たす議論となることを願っている。

生産性白書に込めた思い

 『実録 生産性論争』に書かれていた「日本の生産性運動は、戦後の経済復興と国民生活の向上をめざし、労働界、経済界、学識者をはじめとする各界各層を巻き込みながら国民運動として展開された。人間尊重の精神のもと生産性運動三原則を指針とした労使の信頼と協力が運動推進の基盤であった。わが国は歴史的な転換期を迎え、戦後に続く第2の生産性運動を再起動させなくてはならない」との一節を思い起こす。2020年に出版された生産性白書にも、策定に携わった多くの方々の同様の強い思いが込められており、生産性三原則の今日的意義と実践に向けた提言が記載されている。政労使会議の実現もその一つであった。

政労使会議への期待

 日本が将来どういう社会を目指すのかを決めていかなくてはならない極めて重要な時期だと思う。持続可能な社会への再構築は、必然であり、未来への責任だ。政労使で協力すれば成果が期待できるテーマは多い。「日本が目指す社会像」や「国家戦略としての人材育成や人への投資のあり方」、更には「持続可能な社会保障制度とするための給付と負担のあり方」などについても議論を深められたらどうだろうか。そしてこの一大事業を成し遂げるには何にもまして国民の理解と協力が必要である。そのための力強いメッセージの発信も期待したい。

労働組合の役割と責任を果たそう

 私たちには新しい時代の日本を切り拓く使命がある。変化の波に押し流されるのではなく、主体性を持って変化に挑戦し新しい流れを創りだす気概と実行力が必要である。政労使会議の設立を起点に、日本固有の春闘の仕組みを使って生産性運動が再び国民運動に発展していくことを期待したい。

(「ネットワーク全労生」生産性新聞2023年3月15日号掲載)

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